2016年3月19日土曜日

2015年10月10-12日 地蔵岳〜早川尾根〜仙丈ヶ岳/2日目-悪天候の地蔵岳、雨から吹雪の早川尾根【南アルプス】



地蔵岳のオベリスク


おっはようございま〜す!
早朝からペペロンチーノで元気爆発っ!!
マイホームにニンニク臭の湯気が漂ってくもっております。

もぐもぐ、もぐもぐ、ザーザー、バタバタバタ、ザーザーヒュォー
耳を澄まさなくてもすぐわかる悪天候のお知らせ。
........雨だし風強いし....
テント撤収が嫌すぎる...........

狭いテント内でパッキングを済ませてレインウェアを着込み、さぁ残すはテントのみ。
覚悟を決めて外へ出る。
........ポツポツボタボタボタボタ!
すごい勢いで雨があたるけど躊躇してる暇はない〜!
スピーディ(ぐっしゃぐしゃ)にまとめて(丸めて)、ザックに押し込む(無理矢理).....かんぺき!!

am6:15
さて、出発です。
雨はボタボタと降っていますが、地蔵岳までは樹林帯なので雨風の被害は少なさそうです。

本日のコースですが、早朝のテント会議の結果、予定通り地蔵岳のピークを踏み早川尾根から仙水峠を目指す事にしました。
もし天候がこれ以上悪くなるようであれば、早川尾根の途中にある白鳳峠または広河原峠からエスケープをします。

歩きはじめは樹林の中を登って行くけれど、程なくして足元が砂礫に変わります。
水はけが良いのか悪いのかイマイチ良くわからない土壌。
ビシャっと水たまりを踏んでしまっても、泥がベタっと付く訳ではなく濡れた砂を被るだけ。
登山靴のソールが泥で重たくなるストレスがないのはありがたい。

段々と樹々も減り、徐々に視界が開けてきました。
樹々はひょろっと細く点在するようにあり、なんだか不思議な世界観。
間を縫うように進んで行きます。

ぼやーっと靄に包まれたナナカマドの雰囲気がこの世じゃないみたい。
一歩踏み出しても、後ろ足が砂にもたれて思うように進めない。
それがわたしの体力を奪うものだから、この景色を見ながら『ここは三途の川か.....あの世か......』とブツブツ愚痴っていたような気がします。
だけど異世界のように感じるこの風景はとても美しいなと思うのです。
辛いしキツいけど、雨でしか見れない景色もある。

足元は草紅葉。
枯れた倒木が動物の骨のようにみえるから、サバンナみたい。
ここはすっごく寒いけど。

しっかり前を向いて歩くとダイレクトに雨が視界を遮るから、下を向いて黙々と歩く。
下を向いていようがフードを被ろうが、どうあがいても雨は吹き付けてきます。
顔を洗った時のようにびしょり濡れて、雨が目に入りまくって痛いよ。

先に進めば進むほど、樹々がなくなり雨風が強くなる。
それでも段々とオベリスクらしき姿が浮かび上がってきました。
うぅうううぅぅ。
もう楽しいっていう気持ちは一切なくて、ただ目的地に向かって惰性で足を動かしている状態。
このたった1時間の登りが本当にしんどかったなぁ。

am7:05
そしてついに憧れのオベリスクが目の前に...!!
ここにだけ大きな岩が固まって、不思議な砦を創りあげてる。
オベリスクの先をまじまじと眺めて『狼が遠吠えしてるみたい』と思った。
だけど、このオベリスクが鳥の嘴に見えるから“鳳凰三山”って名前が付いたのだそうです。

オベリスク直下にあるお地蔵様と一緒に。
花崗岩だからか燕岳のイルカ岩を彷彿とさせるね。
雨で岩のコンディションが悪いからオベリスクに登ることは早々に諦めていたけど、せっかくなのでオベリスクの周りをウロウロ徘徊して取り付きを確認したりしました。
ロープは岩に挟まって引っぱり出せず....
どういうこっちゃ。

 せっかくなのでオベリスクと記念撮影しました。
すっごい風と雨で「撮るよ!」の声も聞こえず、ビッショビショだけどやたらと嬉しそうな顔。笑
オベリスクに登れなかったのは残念だけど、こんなに近くまで来れてよかった〜!

 待機していたザックを回収して、先へ進みます。
何度も何度も風でザックカバーが飛ばされては付けなおして.....そんなこんなしているうちにザックもびっちょびちょ。
SEA TO SUMMITウルトラSIL ドライサック を入れているからカバーをしなくても中身が濡れることはないけど、ザック自体が濡れて重みが増すので一応付けております。

地蔵岳には、その名の通りお地蔵様がたくさんいらっしゃいます。
密集したお地蔵様はこんなお天気の中だからかちょっと異質で怖くも感じました。
昔はオベリスクを大日如来として崇めていたそうなので、その頃のみんなが運んできたんだろうか。
わたしも次に来るときは小さなお地蔵様を運んでみようかなぁ。
そしてお地蔵様の向こうに見える稜線が、これから歩く早川尾根です〜。

尾根に乗った瞬間、さっきまでの風雨がへなちょこだったと思えるほどの強烈な突風が襲ってきました。
思ってもいなかった突風にバランスが崩れる....!!
ここから先は稜線を歩くので煽られないように気をつけて行かないと。

雨に目をしばたたかせながら左を見れば鳳凰三山の最高峰、観音岳.....は見えない。笑
ここから観音岳にルートは繋がっているので、晴れていればそのピークも眺められただろうにー。

わたしたちは右に稜線を進みます。
ガスってよく見えないけど向こうのピークが高嶺です。
登り返しが待っていそうだけど、気付かなかったことにしよう。笑


ちょこっとした岩場もあったり、急な下りもあったり。
風でバランスを崩さないように、濡れた岩で足を滑らせないように注意しながら進んで行きます。

am8:35
高嶺に到着しました。
カメラを上着から取り出しては構図も決めずにサっと撮影です。
濡れないようにと必死に防御しますが、一瞬取り出すだけでもビショビショになる...
そろそろカメラが限界を迎えそうです。笑

この辺りから風が強まり、雨が肌に打ち付けるように降ってくるようになりました。
雨でぬれた体が強風に冷されて体温が急速に低下して行くのがわかります。
グローブをしていても岩が信じられないほど冷たく、熱が奪われて指先の感覚がなくなっていきました。

早川尾根は危ないルートではありませんが、露岩の痩せた所を歩いたり、岩を登ったり下りたりするポイントがあります。
普段ならなんてことないはずなのに、この日は雨で岩が滑り、岩の冷たさで手の感覚が鈍り、重い荷物で体のバランスが取りにくいという状態と大きなザックに強風が当たり体が振られるという非常に良くない危険なコンディションでした。

お互いの声も近距離で聞こえない。
休めば急速に体が冷えて震えてしまいます。
強い雨風に必死に耐えながら、ただ黙々と歩きました。

そして今まで痛いほどに打ち付けていた雨が、ここで雪に変わりました。
白く凍った氷の塊が、ウェアにバチバチと音をたてて当たり、視界を遮ります。
この時点で『仙水峠まで行くのは無理だなぁ....』と先に進むことを諦めました。

最初のエスケープルートは白鳳峠、そこまで無事に下りないと。

天候はどんどん悪化し、もう前が見えません。
ある程度痩せた箇所や露岩帯を抜けてからはハイマツが広く茂るなだらかなゴロ道になりました。
歩くのに危険はないけれど、岩の隠れ場所がないので常に風に晒されて低体温になってしまうという危険が。
休むときは足元のハイマツに寝転がるようにして風を避けながら。
風に当たらないだけで天国かと思うほど暖かく感じました。

そんな状況だったけど、早川尾根の稜線はなんて美しいんだろうと思いながら歩いていました。
人がそこまで多く入らないからかハイマツは登山道を隠してしまうように生き生きとギッシリと茂っていて、ガスの中から時折覗く稜線の全容は昔から変わらない、恒久的で山そのものを強く感じさせる素晴らしいものでした。
ここは天気のいい時に必ず再訪しなくちゃね。

下りて行くにつれてハイマツの背は高くなり、ようやく安心出来るようになりました。
無事にエスケープポイントまで辿り着けそうです。
目指していた仙水峠まではここからまだまだ先.....早川尾根小屋を過ぎ、アサヨ峰と栗沢山のピークを越えなければいけません。

峠まで下りてしまえば再び樹林帯となりました。
風もないし、雨や雪もそんなに当たらない.....ようやくホっと一息つけました。

am9:30
白鳳峠
標高を下げてしまえば雪は雨に変わり、樹林のため風も当たらず平穏を取り戻しました。
ここで情報整理と最終ジャッジ。
1・ここから広河原にエスケープする。
2・まだ時間もあるのでもうひとつ先の広河原峠からエスケープする。
3・早川尾根小屋に宿泊し、翌日に仙水峠に下りる。
※このコンディションだと今日中に仙水峠までの○時間を歩くのは危険なのでナシ。

わたしが選んだのは1
いずれにしろ、目指していた仙丈ヶ岳には辿りつけないのならこんなバッドコンディションの中で頑張る必要はないもんね。
それに今は樹林帯で暖かいけど、ここから先に進めば再び森林限界の稜線へ出なきゃ行けないから。
これ以上はやっぱり危ないし楽しくないよね。

下りると決めたら気持ちはスーっと楽になり清々しいくらい!!
白鳳峠から下りはじめるとすぐに樹林帯が終わってしまったので再び吹きさらしに。笑
ここがまた今まで歩いたことのない雰囲気の場所でうっとりしてしまった。
(しっかり写真に残せていないのが残念。)

もそもそ、乾燥したイソギンチャクみたい。
苔の仲間なの?菌類なの?不思議な植物。

そしてあっという間に森の中。
岩に苔がびっしり付いて、それが雨で濡れてるもんだから瑞々しい匂いが濃厚でねぇ。
体の中が浄化されるような綺麗なにおい。

ごっちゃり。
南アルプスらしいなぁと思うのはどうしてだろうか...こんなシラビソとか細い樹々が鬱蒼として、倒木も多くそこに苔がみっちしていると南っぽい。
そんな感じで南アルプスの森を覚えてしまっています。


とにかく樹林に入ってからは下る下る!
どれだけ下りれば気が済むのかってほど急坂の下りが続きます。
こんな梯子やロープも数カ所ありました。

am11:20
バスルートへ下りてきました〜。
下りてみれば雨はほぼ止んでいて、天気も回復傾向です。
実は明日は快晴予報なんですよねぇ。
だからエスケープしたものの、『明日は晴れだから、今からバスで仙水峠に行って泊まって仙丈ヶ岳に日帰りしたいなぁ...』なんて淡い期待を口に出してみたけれど...
「こんなに装備がびっしょりなんだからダメだよ。」と見事にバッサリ。笑
ごもっとも〜!!!

ちょーん。
今日歩かずに、鳳凰小屋でもう1日停滞すれば良かったのかなぁ。
いやでもあそこにいてもしょうがないもんなぁ...
ぐるぐる....もやもや...無念......!!!

ぽてぽて歩くこと15分。
広河原に到着です。

広河原のセンターに入ってみると、さっきの雪の情報が張り出されていました。
仙丈小屋で3cm、北岳は5cmかぁ。
もしかしたら雪が降るかもと思ってチェーンスパイクを持ってきていたけど、正解だったな(行かないけど)
秋のアルプスはこういう怖さがあるんだね。
もし小屋で寝てる間に雪が降って、朝起きたら雪景色!アイゼン持ってきてない〜どうしよ〜!ってなってしまうリスクもあるってこと。
今回の山行をどこにするか決める時、師匠は常にそのリスクを念頭に置いていました。
山を歩くことに慣れたから、体力もついたから、とかそんな自信だけじゃなくて、季節や天候のリスクを山域やルートを考えて推し量れるようにならないとダメだなぁと改めて感じました。

広河原から甲府駅までは直通バスで向かいます。
どんどん遠くなって行く南アルプスを窓からジっと眺めていたけれど、いつの間にか眠っていました。

甲府駅からの帰りの電車の中ではもちろんお酒タイムでございます。
駅についてすぐに温泉に入ろうと向かったのですが、残念ながらギュウギュウ混雑で...
おしくらまんじゅう状態になりそうだったのでスゴスゴと敗退してきました。
時間もあまりなかったのでご当地食も食せず、なんとも無念。
ってことで電車内にてヤケ酒パーティーとなったわけです。
こんなチッコイワインを飲んだだけなのに、ふわふわといい気分.....ねむい。
新宿駅までふわふわウトウトしながら夢見心地なのでした。

-
今回の山旅は2日目の天気が良くないのは承知の上のものでした。
稜線で吹雪かれるとは思わなかったけどね。笑
装備や体力が不十分だったら、師匠が一緒にいなかったら、もしかしたら危険な山旅になっていたかもしれません。
秋のアルプスはいつでも瞬間的に冬になる怖さを持っています。
天気予報が晴れを示していたとしても、崩れることだってあるから。
山を歩いた回数や体力だけではどうにもならなくて、天気の知識や先を見る力とか色々な知識を身につけないといけないなぁと感じたのでした。

色々学べる師匠山行、今回のテーマは悪天候のテント撤収と暴風稜線の歩き方(サブテーマは重い荷物を運べるかの体力テスト)と言ったところでしょうか。笑
次はツェルトビバークをしないとねって言っていたけど、えぇぇ〜。
思い出の仙丈ヶ岳に一緒に行けなかったのはとても残念だったけれど、貴重な経験もできて充実したものになったなぁと思います。
自分ひとりじゃ体験できないようなことを教えてくれる師匠山行、次回も楽しみ(?)です!

-
コースタイム
1日目
青木鉱泉(11:00)---滝展望台分岐(12:15)---南精進ヶ滝(12:20)---鳳凰の滝(13:05)---白糸滝(14:00)---五色滝---(14:40)---鳳凰小屋(15:30)
※休憩時間含め、4時間30分

2日目
鳳凰小屋(6:15)---地蔵岳(7:05〜7:35)---赤抜沢ノ頭(7:45)---高嶺(8:35)---白鳳峠(9:30)---白鳳峠入口(11:20)---広河原(11:35)
※休憩時間含め、5時間15分

アクセス
行き/中央本線:韮崎駅から山梨中央交通バスにて青木鉱泉
帰り/バス:広河原〜甲府駅(南アルプス市営バス

○今回のやまのぼりアイテム


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2016年3月18日金曜日

2015年10月10-12日 地蔵岳〜早川尾根〜仙丈ヶ岳/2日目-悪天候の地蔵岳、雨から吹雪の早川尾根【南アルプス】



地蔵岳のオベリスク


おっはようございま〜す!
早朝からペペロンチーノで元気爆発っ!!
マイホームにニンニク臭の湯気が漂ってくもっております。

もぐもぐ、もぐもぐ、ザーザー、バタバタバタ、ザーザーヒュォー
耳を澄まさなくてもすぐわかる悪天候のお知らせ。
........雨だし風強いし....
テント撤収が嫌すぎる...........

狭いテント内でパッキングを済ませてレインウェアを着込み、さぁ残すはテントのみ。
覚悟を決めて外へ出る。
........ポツポツボタボタボタボタ!
すごい勢いで雨があたるけど躊躇してる暇はない〜!
スピーディ(ぐっしゃぐしゃ)にまとめて(丸めて)、ザックに押し込む(無理矢理).....かんぺき!!

am6:15
さて、出発です。
雨はボタボタと降っていますが、地蔵岳までは樹林帯なので雨風の被害は少なさそうです。

本日のコースですが、早朝のテント会議の結果、予定通り地蔵岳のピークを踏み早川尾根から仙水峠を目指す事にしました。
もし天候がこれ以上悪くなるようであれば、早川尾根の途中にある白鳳峠または広河原峠からエスケープをします。

歩きはじめは樹林の中を登って行くけれど、程なくして足元が砂礫に変わります。
水はけが良いのか悪いのかイマイチ良くわからない土壌。
ビシャっと水たまりを踏んでしまっても、泥がベタっと付く訳ではなく濡れた砂を被るだけ。
登山靴のソールが泥で重たくなるストレスがないのはありがたい。

段々と樹々も減り、徐々に視界が開けてきました。
樹々はひょろっと細く点在するようにあり、なんだか不思議な世界観。
間を縫うように進んで行きます。

ぼやーっと靄に包まれたナナカマドの雰囲気がこの世じゃないみたい。
一歩踏み出しても、後ろ足が砂にもたれて思うように進めない。
それがわたしの体力を奪うものだから、この景色を見ながら『ここは三途の川か.....あの世か......』とブツブツ愚痴っていたような気がします。
だけど異世界のように感じるこの風景はとても美しいなと思うのです。
辛いしキツいけど、雨でしか見れない景色もある。

足元は草紅葉。
枯れた倒木が動物の骨のようにみえるから、サバンナみたい。
ここはすっごく寒いけど。

しっかり前を向いて歩くとダイレクトに雨が視界を遮るから、下を向いて黙々と歩く。
下を向いていようがフードを被ろうが、どうあがいても雨は吹き付けてきます。
顔を洗った時のようにびしょり濡れて、雨が目に入りまくって痛いよ。

先に進めば進むほど、樹々がなくなり雨風が強くなる。
それでも段々とオベリスクらしき姿が浮かび上がってきました。
うぅうううぅぅ。
もう楽しいっていう気持ちは一切なくて、ただ目的地に向かって惰性で足を動かしている状態。
このたった1時間の登りが本当にしんどかったなぁ。

am7:05
そしてついに憧れのオベリスクが目の前に...!!
ここにだけ大きな岩が固まって、不思議な砦を創りあげてる。
オベリスクの先をまじまじと眺めて『狼が遠吠えしてるみたい』と思った。
だけど、このオベリスクが鳥の嘴に見えるから“鳳凰三山”って名前が付いたのだそうです。

オベリスク直下にあるお地蔵様と一緒に。
花崗岩だからか燕岳のイルカ岩を彷彿とさせるね。
雨で岩のコンディションが悪いからオベリスクに登ることは早々に諦めていたけど、せっかくなのでオベリスクの周りをウロウロ徘徊して取り付きを確認したりしました。
ロープは岩に挟まって引っぱり出せず....
どういうこっちゃ。

 せっかくなのでオベリスクと記念撮影しました。
すっごい風と雨で「撮るよ!」の声も聞こえず、ビッショビショだけどやたらと嬉しそうな顔。笑
オベリスクに登れなかったのは残念だけど、こんなに近くまで来れてよかった〜!

 待機していたザックを回収して、先へ進みます。
何度も何度も風でザックカバーが飛ばされては付けなおして.....そんなこんなしているうちにザックもびっちょびちょ。
SEA TO SUMMITウルトラSIL ドライサック を入れているからカバーをしなくても中身が濡れることはないけど、ザック自体が濡れて重みが増すので一応付けております。

地蔵岳には、その名の通りお地蔵様がたくさんいらっしゃいます。
密集したお地蔵様はこんなお天気の中だからかちょっと異質で怖くも感じました。
昔はオベリスクを大日如来として崇めていたそうなので、その頃のみんなが運んできたんだろうか。
わたしも次に来るときは小さなお地蔵様を運んでみようかなぁ。
そしてお地蔵様の向こうに見える稜線が、これから歩く早川尾根です〜。

尾根に乗った瞬間、さっきまでの風雨がへなちょこだったと思えるほどの強烈な突風が襲ってきました。
思ってもいなかった突風にバランスが崩れる....!!
ここから先は稜線を歩くので煽られないように気をつけて行かないと。

雨に目をしばたたかせながら左を見れば鳳凰三山の最高峰、観音岳.....は見えない。笑
ここから観音岳にルートは繋がっているので、晴れていればそのピークも眺められただろうにー。

わたしたちは右に稜線を進みます。
ガスってよく見えないけど向こうのピークが高嶺です。
登り返しが待っていそうだけど、気付かなかったことにしよう。笑


ちょこっとした岩場もあったり、急な下りもあったり。
風でバランスを崩さないように、濡れた岩で足を滑らせないように注意しながら進んで行きます。

am8:35
高嶺に到着しました。
カメラを上着から取り出しては構図も決めずにサっと撮影です。
濡れないようにと必死に防御しますが、一瞬取り出すだけでもビショビショになる...
そろそろカメラが限界を迎えそうです。笑

この辺りから風が強まり、雨が肌に打ち付けるように降ってくるようになりました。
雨でぬれた体が強風に冷されて体温が急速に低下して行くのがわかります。
グローブをしていても岩が信じられないほど冷たく、熱が奪われて指先の感覚がなくなっていきました。

早川尾根は危ないルートではありませんが、露岩の痩せた所を歩いたり、岩を登ったり下りたりするポイントがあります。
普段ならなんてことないはずなのに、この日は雨で岩が滑り、岩の冷たさで手の感覚が鈍り、重い荷物で体のバランスが取りにくいという状態と大きなザックに強風が当たり体が振られるという非常に良くない危険なコンディションでした。

お互いの声も近距離で聞こえない。
休めば急速に体が冷えて震えてしまいます。
強い雨風に必死に耐えながら、ただ黙々と歩きました。

そして今まで痛いほどに打ち付けていた雨が、ここで雪に変わりました。
白く凍った氷の塊が、ウェアにバチバチと音をたてて当たり、視界を遮ります。
この時点で『仙水峠まで行くのは無理だなぁ....』と先に進むことを諦めました。

最初のエスケープルートは白鳳峠、そこまで無事に下りないと。

天候はどんどん悪化し、もう前が見えません。
ある程度痩せた箇所や露岩帯を抜けてからはハイマツが広く茂るなだらかなゴロ道になりました。
歩くのに危険はないけれど、岩の隠れ場所がないので常に風に晒されて低体温になってしまうという危険が。
休むときは足元のハイマツに寝転がるようにして風を避けながら。
風に当たらないだけで天国かと思うほど暖かく感じました。

そんな状況だったけど、早川尾根の稜線はなんて美しいんだろうと思いながら歩いていました。
人がそこまで多く入らないからかハイマツは登山道を隠してしまうように生き生きとギッシリと茂っていて、ガスの中から時折覗く稜線の全容は昔から変わらない、恒久的で山そのものを強く感じさせる素晴らしいものでした。
ここは天気のいい時に必ず再訪しなくちゃね。

下りて行くにつれてハイマツの背は高くなり、ようやく安心出来るようになりました。
無事にエスケープポイントまで辿り着けそうです。
目指していた仙水峠まではここからまだまだ先.....早川尾根小屋を過ぎ、アサヨ峰と栗沢山のピークを越えなければいけません。

峠まで下りてしまえば再び樹林帯となりました。
風もないし、雨や雪もそんなに当たらない.....ようやくホっと一息つけました。

am9:30
白鳳峠
標高を下げてしまえば雪は雨に変わり、樹林のため風も当たらず平穏を取り戻しました。
ここで情報整理と最終ジャッジ。
1・ここから広河原にエスケープする。
2・まだ時間もあるのでもうひとつ先の広河原峠からエスケープする。
3・早川尾根小屋に宿泊し、翌日に仙水峠に下りる。
※このコンディションだと今日中に仙水峠までの○時間を歩くのは危険なのでナシ。

わたしが選んだのは1
いずれにしろ、目指していた仙丈ヶ岳には辿りつけないのならこんなバッドコンディションの中で頑張る必要はないもんね。
それに今は樹林帯で暖かいけど、ここから先に進めば再び森林限界の稜線へ出なきゃ行けないから。
これ以上はやっぱり危ないし楽しくないよね。

下りると決めたら気持ちはスーっと楽になり清々しいくらい!!
白鳳峠から下りはじめるとすぐに樹林帯が終わってしまったので再び吹きさらしに。笑
ここがまた今まで歩いたことのない雰囲気の場所でうっとりしてしまった。
(しっかり写真に残せていないのが残念。)

もそもそ、乾燥したイソギンチャクみたい。
苔の仲間なの?菌類なの?不思議な植物。

そしてあっという間に森の中。
岩に苔がびっしり付いて、それが雨で濡れてるもんだから瑞々しい匂いが濃厚でねぇ。
体の中が浄化されるような綺麗なにおい。

ごっちゃり。
南アルプスらしいなぁと思うのはどうしてだろうか...こんなシラビソとか細い樹々が鬱蒼として、倒木も多くそこに苔がみっちしていると南っぽい。
そんな感じで南アルプスの森を覚えてしまっています。


とにかく樹林に入ってからは下る下る!
どれだけ下りれば気が済むのかってほど急坂の下りが続きます。
こんな梯子やロープも数カ所ありました。

am11:20
バスルートへ下りてきました〜。
下りてみれば雨はほぼ止んでいて、天気も回復傾向です。
実は明日は快晴予報なんですよねぇ。
だからエスケープしたものの、『明日は晴れだから、今からバスで仙水峠に行って泊まって仙丈ヶ岳に日帰りしたいなぁ...』なんて淡い期待を口に出してみたけれど...
「こんなに装備がびっしょりなんだからダメだよ。」と見事にバッサリ。笑
ごもっとも〜!!!

ちょーん。
今日歩かずに、鳳凰小屋でもう1日停滞すれば良かったのかなぁ。
いやでもあそこにいてもしょうがないもんなぁ...
ぐるぐる....もやもや...無念......!!!

ぽてぽて歩くこと15分。
広河原に到着です。

広河原のセンターに入ってみると、さっきの雪の情報が張り出されていました。
仙丈小屋で3cm、北岳は5cmかぁ。
もしかしたら雪が降るかもと思ってチェーンスパイクを持ってきていたけど、正解だったな(行かないけど)
秋のアルプスはこういう怖さがあるんだね。
もし小屋で寝てる間に雪が降って、朝起きたら雪景色!アイゼン持ってきてない〜どうしよ〜!ってなってしまうリスクもあるってこと。
今回の山行をどこにするか決める時、師匠は常にそのリスクを念頭に置いていました。
山を歩くことに慣れたから、体力もついたから、とかそんな自信だけじゃなくて、季節や天候のリスクを山域やルートを考えて推し量れるようにならないとダメだなぁと改めて感じました。

広河原から甲府駅までは直通バスで向かいます。
どんどん遠くなって行く南アルプスを窓からジっと眺めていたけれど、いつの間にか眠っていました。

甲府駅からの帰りの電車の中ではもちろんお酒タイムでございます。
駅についてすぐに温泉に入ろうと向かったのですが、残念ながらギュウギュウ混雑で...
おしくらまんじゅう状態になりそうだったのでスゴスゴと敗退してきました。
時間もあまりなかったのでご当地食も食せず、なんとも無念。
ってことで電車内にてヤケ酒パーティーとなったわけです。
こんなチッコイワインを飲んだだけなのに、ふわふわといい気分.....ねむい。
新宿駅までふわふわウトウトしながら夢見心地なのでした。

-
今回の山旅は2日目の天気が良くないのは承知の上のものでした。
稜線で吹雪かれるとは思わなかったけどね。笑
装備や体力が不十分だったら、師匠が一緒にいなかったら、もしかしたら危険な山旅になっていたかもしれません。
秋のアルプスはいつでも瞬間的に冬になる怖さを持っています。
天気予報が晴れを示していたとしても、崩れることだってあるから。
山を歩いた回数や体力だけではどうにもならなくて、天気の知識や先を見る力とか色々な知識を身につけないといけないなぁと感じたのでした。

色々学べる師匠山行、今回のテーマは悪天候のテント撤収と暴風稜線の歩き方(サブテーマは重い荷物を運べるかの体力テスト)と言ったところでしょうか。笑
次はツェルトビバークをしないとねって言っていたけど、えぇぇ〜。
思い出の仙丈ヶ岳に一緒に行けなかったのはとても残念だったけれど、貴重な経験もできて充実したものになったなぁと思います。
自分ひとりじゃ体験できないようなことを教えてくれる師匠山行、次回も楽しみ(?)です!

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コースタイム
1日目
青木鉱泉(11:00)---滝展望台分岐(12:15)---南精進ヶ滝(12:20)---鳳凰の滝(13:05)---白糸滝(14:00)---五色滝---(14:40)---鳳凰小屋(15:30)
※休憩時間含め、4時間30分

2日目
鳳凰小屋(6:15)---地蔵岳(7:05〜7:35)---赤抜沢ノ頭(7:45)---高嶺(8:35)---白鳳峠(9:30)---白鳳峠入口(11:20)---広河原(11:35)
※休憩時間含め、5時間15分

アクセス
行き/中央本線:韮崎駅から山梨中央交通バスにて青木鉱泉
帰り/バス:広河原〜甲府駅(南アルプス市営バス

○今回のやまのぼりアイテム





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